今日の発表[wifi.livedoor.com]でホリエモン堀江貴文氏が言いたかったのは、つまりこういうことです。(「どこでも」の解釈は人によって違うと思いますが・・・)
「フジテレビからぶんどった[japan.cnet.com]金(400億)のほんの一部(初期投資7億、数年で100億程度)[impress.co.jp]を、免許不要でコストが安い無線LANにつぎ込んで、首都圏を点ではなく面でカバーする最強の無線ブロードバンドインフラを作る」
「これを月額定額525円で提供し[japan.cnet.com]、Skypeをのせてドコモ(契約数約5000万)やau(2000万)をつぶす」
(この意味で「携帯ビジネスはぼったくり」[zakzak.co.jp]発言は伏線でしたね)
「さらに家の中まで電波を届かせることでISP(プロバイダ)をつぶす」
(ちなみに現状のYahoo!BBとOCNの会員数を足すと850万くらい)
「このサービスを使うためにはライブドアIDが必要だから、契約数(=課金ID数)が1000万くらいになれば、楽天(2005年3月末で会員が1400万人)と対抗できる。課金会員でなくても無線LAN機器とがあればポータルにだけはつながる(つまりタダ)から、ネット利用者以外にまでポータルの利用者が増えて、Yahoo! JAPAN(1日10億ページビュー)[yahoo.co.jp]とも張り合える」
(ライブドアのポータルの現在のエンジンは広告収入、将来のねらいは課金ID(とそれを使った決済・証券事業)でしょうから、これはニッポン放送の買収なんかよりよっぽど有効でしょう)
うまいなと思う点。
- 参入がラクでインフラコスト安い
いまソフトバンクやイーアクセスが大騒ぎ[japan.cnet.com]しているような携帯電話の周波数帯と違い、無線LANというのは総務省の免許が無くても使えるわけです。しかもこれから参入するので、比較的新しい11g規格(ベストエフォートで54Mbps)を全面導入できる。バックボーンネットワークも安く調達できる。アンテナもIBM他の最新の技術を導入して[nikkeibp.jp]高性能なものが使える。無線LANのアンテナをひとつ立てると数十万円オーダーなんですが、ライブドアの場合屋外型であること(コスト増大要因)と、設置が集中すること(コスト減少要因)を勘案して、1台30万円とすると初年度2200箇所で6.6億、1都8県に60000箇所で180億。電柱から先の部分でYOZANやパワードコムとどういう契約になっているかがわかりませんけど、無線LANの設備投資って意外と小さいんですよね。 - ポータルがタダ
これはすごい。各ポータルがいかに自分のポータルサイト内に人を滞留させておくか(囲い込むか)で勝負している中で、外に出られないポータルを提供してしまうわけです。外(インターネット)に出るのが目的の有料ユーザーも、アクセスする際はWeb画面でIDとパスワードを入れなければならないから、どうしてもライブドアのポータルを通らなければならない。まさに文字通りのポータル(玄関)。これはページビュー増加に寄与するところ極大でしょう。
損益分岐点は有料会員10万人程度という発言があったみたいですが、先行する業者の3分の1という価格設定ができるのは、おそらく広告収入を大きくみた計画なんでしょう(先行業者がすべて3万人以上いるとは思えないし、3万を超えていたとしてもうまく行っているとは聞きませんし)。
ついでに言うと、一連のニッポン放送ネタで増えたであろうライブドアID保持者を、一気にこのサービスに誘引するパワーも今後すごいことになるだろうと思います。
次に、疑問に思う点。
- 大前堤:無線LANの電波はそんなに届かない
IBMの技術がどんなにすごいかわかりませんけど、屋外のアンテナから屋内にまで電波を飛ばす(無線の職人さんは「吹く」と言いますね)のは難しいと思うのです。電子レンジの影響で使えなくなったりするような周波数帯でもあり、干渉の問題とかけっこう大変なんじゃないかと。丸の内[nikkeibp.co.jp]とか白川郷[nikkeibp.co.jp]で、屋外に屋内用無線LANアンテナを立てている例がありますけれど、写真で見るとけっこう建物の近くにアンテナ立ててますよね。大手町のビルの中なんて電波状況はどうなんでしょう? 使ってみたらたいしたことなかったってことになると、初期のPHSと同じで一気にユーザーが離れていきます。 - どこまでスループットが出るのか
規格上54メガといっても、実質30M程度ですし、一度に複数のユーザーがアクセスすればその分速度は落ちます。30ユーザーまで大丈夫[impress.co.jp]ということは、状態が良くてもひとり1M程度になるということです。音声はかろうじて使い物になるでしょうけど、動画配信は難しいんじゃないかなあ。 - ハンドオーバーできるのか
ケータイの置き換えを目指すなら重要な点ですが、ホントにできるのかなあ? - 電話番号がつくか
Skypeがケータイの代わりになるには、Skype In/OutでSkypeのネットワーク外と通話できるようになることが必須ですが、現状では公衆無線IP通話に電話番号は認められていません。ただし、NTTコミュニケーションズ[nikkeibp.co.jp]とかFusion[japan.cnet.com]が無線環境下のソフトフォンに050番号をつけるというウワサもあるので、そのうち解決する話なのかな。 - 広告ビジネスで乗り切れるか
ニワトリと卵ですけど、このサービス価格が広告収入を前提にしているとしたら、その動向がこのインフラ整備に影響を与えるかもしれず、そのことがさらに広告収入を減らすかも知れない。とはいえ現状でもライブドアは金を持ってますし、証券・投資業で充分儲かっているから無線インフラ整備くらいはなんとかやりくりできそうな気もする。 - 競合はいくらでもいる、が
参入障壁が低いということは、競合も多いということです。たとえばNTTグループとか、KDDI、ソフトバンク、インデックスとかが同じ事をやることもできる。しかし、これらの会社は既存の携帯や固定通信で稼ぐビジネスなので、金のなる木をあえてつぶすことはできない。そこに捨て身のライブドアの勝機がある。
うーむ、こう考えると、技術的問題が解決しているのであれば(IBMがそんなにすごいのか)、ものすごい事になるかも。少なくとも既存の公衆無線LANユーザは乗り換え決定でしょう。
しかし「ポータルだけはタダ」は元Web屋として目からウロコでした。さすが100億稼ぐ仕事術の人はすごいですな。堀江社長のセミナーはプレミアムシートで参加費12万[ns-research.jp]だっていうのもすごいですけど、100億稼げるようになるなら安いもんなのか知らん?
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TBありがとうございます。かなり分析されてますね。
確かにポータルから出られないってのはコロンブスの卵みたいなとらえ方かもですね。
自分のエントリーでは書かなかったんですけど、このニュースを見たときに、ヤフーBBを始めたころのソフトバンクみたいだなぁというイメージがしました。
ネックは技術的な問題とセキュリティですかねぇ……
>roppaさん
さっそくにありがとうございます。おっしゃるとおりセキュリティも含めて技術面が気になりますね。Yahoo! BBのように世の中を変え、同時に世の中を混乱させるんでしょうね。
ところでD-cubic(Dの3乗?)ってどういう意味なんでしょう? 発表ライブ全部見ればどこかでコメントしてるんでしょうか。
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