またまた前回からの続きです。
イ 広告売上げに対する影響
債務者のカバー人口は約4054万人であり、債務者のコアのファンは約1050万人である。債務者の運営するラジオ番組と債権者のポータルサイトの提携により、債権者の顧客数は3年間で1050万人増加し、その結果として、閲覧数が大幅に増加すると予測される。今回の提携により平成17年の広告収入は約 116億円増加すると見込まれる。ラジオ聴取者をポータルサイトに誘導したことで増加した広告収入の70パーセントを債務者に還元するとともに、ラジオ聴取者からポータルサイトへの会員化誘導に成功した場合にはその件数に応じて債務者に成功報酬(1件あたり1000円)を支払うビジネスモデルを考えているため、平成20年の債務者の広告売上増は279億円、営業利益増は230億円と推定される。(甲29の1)
コアなファンって誰のことよ?
カバー人口約4054万人はほぼ首都圏の人口(平成15年10月1日現在4197万人[npb.go.jp])に等しいですね。で、その4人に1人が「コアなファン」だと。
どういう基準で「コア」と言っているのか。「一度でもニッポン放送を聴いたことがある人」とかじゃないの?
さらに、「1050万人会員が増加」ってことはつまり、現在のコアなニッポン放送リスナーは全員ネットユーザーで、なおかつライブドアを一切使っていないという前提なワケだ。で、その100パーセントがライブドア会員になると。すげー話だな。
平成17年の広告収入は約 116億円増加ですか。これは1242.com上の広告分という意味ですよね? どういう形態の広告を出すかわかりませんけど、単純なバナーで考えると1ページビューの広告価値を0.3円として(=Yahoo! JAPANの広告料金)、年間386億PV=1日1億PV増加。以前読売新聞のネタで紹介したAlexaのトラフィック情報からYahoo! JAPANと比較すると、今年中にYahoo!JAPANの10%、つまりYahoo!メール(推計1.2億PV/日)並みの人気サイトになるワケですな。
ウ 物品販売に対する影響
ラジオからの顧客誘導により債権者が開設する物品販売サイトの利用者が増加し、これにより取扱高が増加するとともに、債権者が開設する物品販売サイトでの売上高の5パーセントを債務者に還元することにより、平成20年の債務者の売上増は110億円、営業利益増は42億円と予測される。(甲29の1)
株式会社ポニーキャニオンのCDとDVDの売上高は、590億円程度であるが、ラジオ番組と連携した通信販売を行うことにより、平成17年には10パート程度の売上げ増加が達成できる。(甲29の1)
この文章だと、ニッポン放送がライブドアの通販サイトのアフィリエイトをするように読めますね(主語は債権者の販売サイトだから)。
ニッポン放送の売上増が110億ってことは、1242.comサイト経由の通販売上は2200億。通販市場の規模が、富士経済の予測[nikki.ne.jp]で2003年に2兆8,550億円(TVショッピングだけ取り出すと2003年2,250億円)。平成20年に仮に通販市場全体が3兆を超えていたとしても、その1割近くがニッポン放送発で、2003年のTVショッピング市場規模並みになるということ?
それともサイト経由の売上が110億円ってことかな? それにしても、楽天の2003年の売上高が180億円[cnet.com]であることを考えたら相当な規模ですわね。
エ 課金サービスに対する影響
株式会社ポニーキャニオンの映像・音楽ソフトを債権者のインターネット関連技術及びポータルサイトチャネルを利用することにより、多くの消費者に対してインターネットで配信することが可能となり、株式会社ポニーキャニオンの平成20年の売上増は229億円、営業利益増は69億円と推定される。(甲29の1)
CDとDVDの売上が現状590億円。それがが17年には649億円(10%増)、20年には590+229=819億円になるってことか。だいたい10%成長を続けるわけですね。
ポニーキャニオンって、すでに各音楽配信サイトで売ってますよね。それをライブドアのチャネルで売るからって、そんなに成長に貢献するとは思えないんだけどなあ。
以上は裁判所の文章を読んでのツッコミなので、細かい資料全部見ればまた話は違うのかもしれません。また、つっこんでるこちらも曖昧な数値をもとに話を組み立ててます。ただ、堀江氏の言う「シナジー」ってのがどういう前提で語られているのかは少し見えますよね。
注目できるのは唯一「放送(過去のものも含む)のネット配信」のみ。あとはテキトーな前提を元に作った予測。
そもそも「シナジー」なんてものを議論するのが無駄で、ライブドアは単に割安な企業の株を買っただけだ(企業家というよりは投資家として)という意見もあります[blog.goo.ne.jp]。それなら非常に納得なんですが、それはそれで、そのために使ったお金の調達コスト(例の転換社債の問題とか)と、手に入れた資産から上がる利益(ライブドアのサイト自身のトラフィック増も含む)とのバランスがどうなるのか、という説明が必要ですよね。私は株主じゃないんでどうでもいいですけど、結局既存コンテンツのネット上での切り売りとか、固定費(人件費)削減とかで利益を出すしかないような気がするんですけどねえ。
ニッポン放送側の主張はここでは取り上げませんでしたが、こっちも相当な理屈で、すべて「フジサンケイグループを抜けるから取引がなくなって赤字になる」という話になってます。じゃあ、いままですべての取引は価格や品質に関係なく「グループだから」って理由で決裁が下りてたってこと? それって企業としてどうなのよ・・・。
「すべての発言はポジショントークである」ですし、企業法務学習日記さん[blog.goo.ne.jp]がそのあたりを分類してたりします。私の立場を説明しておくと、
- IT関連株にはほとんど目もくれない、「さわかみ&竹田和平イズム」のプチ投資家である
- 市場優先主義(経団連の奥田さんとか、木村剛さんとか)に近い考え方である
- ちなみにニッポン放送リスナーである
- 昨年末くらいから「最後の規制産業」マスメディアには割安な株があり、さらにリストラで利益を出す余地があると考えていた
- また、今後景気回復に合わせてマスコミの広告収入は好転すると考えていた(というか各社そういう予測をしてます)
- 実際に年末から放送株を買い始めていた
- 先月からのライブドア騒ぎのせいで、ニッポン放送以外の放送株にも軒並み注目が集まり、安値での仕込みが難しくなった
まあ、そういうことで(^_^;)。今後興味があるのは堀江氏の政界進出くらいかな。
クリック募金でちょっといいこと。(クリック募金とは?)
【クリック募金】盲導犬の育成を支援しよう(価格.com)
【クリック募金】日本で暮らす難民をサポート(味の素)
【クリック募金】焼き畑から循環型農業へ(コスモ石油)
こんなネタもどうぞ:
- 服のコンサルタント協会のサイト立ち上げ
- 肉に合う日本酒『Meat Lovers Only』のサイト立ち上げ
- 刀剣の第一発見者になった話(その3)
- 刀剣の第一発見者になった話(その2)
- ネットラジオレコーダーの不具合とその解決(2017年1月)
TBありがとうございました。
それとこの文中の記述についてですが、
リンクしてもらってるのでちょっと言い訳します。
僕は割安な企業の株を買ったことを強調したけど
買っただけだとは書いてませんよ。
むしろ「利用価値がある」、「キャッシュフローが増える」
と書きました、つまりシナジー効果は当然ある、
ということです。
そして僕が否定したのは放送の新しいあり方とか、
そんな類の、哲学?というような
ことです。
もちろん議論するのはいいですけど、
それはまた違う次元の議論では、ということです。
経営権の議論とその辺がごちゃまぜにされたり
すると分かりにくくなるので、自分が今何を議論してるのか
を明確にするためです。
まとめると、
ライブドアが窮地に立たされるほど資産価値が減少
するリスクは低い、ということを強調したかったんです。
失礼しました。
ライブドアやその周辺の報道等について〜続き3
これまで、報道が結果的に顧客をライブドアのポータルサイト
に誘導していること。
このことがライブドアの戦略にとって重要な意味を持つこと。
そして、これはライブド…
daifukusukeさん、コメントまでしていただいてありがとうございます!
おっしゃりたい意図は了解です。現在の「daifukusukeのにっき」内のシリーズを読んでいく中で整理されていくと期待しているので、変なチャチャになってたらごめんなさい。
上のような書き方になったのを私も言い訳すると、直感で、増えるキャッシュフロー&ポータルへのアクセスが、(現状の効果は大いに認めるものの)持続可能なものかどうかがまだピンと来てないからなんです。
堀江氏が今後もいろんな勝負で鮮やかに勝ち続けて、ソフトバンク・YahooJAPAN並の、誰にも負けない規模のナンバーワンになればいいですけれど、「マスコミでの話題度」「メディア力」というのが、たとえばMS(OS独占)やGoogle(検索技術とコンセプトの独自性)が米Yahoo!に対抗していったように有効な武器となるのかどうか。
本文全3回の意図は「ライブドアの武器が知りたい」→「日経にヒント(地裁の文章)が出ていた」→「よく見たら変な話だった」ということです。で、地裁の文章に書かれていない話題を取り扱っているサイトとしていくつか見ていく中でdaifukusukeさんのサイトを見つけたので、このコメントに書いたようなことを思って、ちょこっと紹介したと、そういうことです。
「ライブドアが負けるわけがない」という話に確信が持てたら私もライブドア株買います。いや、気にしないでください(^_^;)。