ドン・キホーテの「圧縮陳列」が何かと話題になっていますけれど(家電量販店なんかも検査が厳しくなっているとか)、防火・防犯上の問題はともかく、あの手法は非常に成功したわけですよね。ディスカウントストアとか家電量販店、ドラッグストア、CDショップなんかも、広い店内に大量の商品を並べて、お客さんを長時間滞留(というか「回遊」か)させるという意味では同じところを目指していると思います。
同じものを同じような値段で売っていたとしても、こういう大型店が流行り、地元の商店街がすたれる理由というものを、価格戦略とか商品バリエーションとかの比較ではなく、人間行動学の観点から分析しているのが今回紹介する『続・入りやすい店売れる店』です。
人間にも「なわばり」があるという話は聞いたことあると思います。相手との関係によって、3メートルの距離でも居心地が悪くなったり、密着してても気持ちよかったりすると。
で、この本が言うにはお店のなかには
- 店員空間
- 商品空間
- 客空間
という3つの空間があって、そのバランスと店員の行動で「売れる店」というのが決まってくるそうです。
たとえば、コンビニにおいては店員は店の奥にあるレジカウンターの中にいて、基本的に接客はしない(なわばりを主張しない)。商品はガラス越しによく見えて、立ち読みをしている客がいることもよくわかる(商品空間が客に開放されている)。客は商品を勝手に見てさわって選んでレジに持っていく。
酒屋さんによくあるパターンは、細長い店の入り口にレジがあって、商品はレジの店員空間の前を通って行かないと見られない。ある程度の値段のものはレジの背後にあったりして、店員(主人)に声をかけて相談して、店員の手をわずらわせないと検討さえもできない。しかも「こないだどこの誰さんは何を買った」みたいな情報があからさまに伝わってしまう。
さて、同じ値段のお酒を買いに行くとして、あなたはコンビニと酒屋のどちらに行きますか?
モノが少なくて商品自体に魅力があった時代、店が少なくて買い物ができること自体がありがたかった時代は「酒屋スタイル」で良かったわけですが、商品に関する情報があふれ、モノがあふれ、店が乱立する現代ではそれは通用しないとこの本は言います。商店街が衰退したのは商品点数や商品価格だけの問題ではなく、消費者の購買行動の変化に対応できていないからだ、と。店頭での力関係として、店側から客側へのパワーシフトが起きているのに、いまだに店優位の商売をしている。
お客さまをないがしろにしているわけではない、とお店側は言うでしょう。「笑顔を忘れず」「元気よく声をかけ」「お辞儀は60度」・・・。しかしその行動自体がお客に対してのプレッシャーになっている。客側はだんだんそういう店を避け、駅前や郊外の量販店へ向かう。
百貨店も売り上げ不振が言われてますが、やはり同じ理由。売り場に入るやいなや「いらっしゃいませ」と接近してくるのはプレッシャーですし、話しかけてこないにしても商品のまわりに手持ち無沙汰な感じで立っていられると近づきにくい。商品空間を店員が支配してしまっているわけですな。
結論として、いま売れる店の条件は
- 店員は過剰な接客をしない(かつ常連・一見の客を区別しない)
- 冷やかしを受け入れて、滞留時間が長くなる店の構造
といったところなんですね。
「常連・一見の客を区別しない」というのはCRM的な、ノードストローム的(『ノードストローム・ウェイ—絶対にノーとは言わない百貨店 』: Amazon.co.jp)な考えからは間違っているような感じもしますよね。でも筆者は「だれもが常連優良客を満足させるほどの接客術を持っているわけではない」という現状認識で話しているので、もし接客のスペシャリストをそろえられるのであれば「一見さんお断り」のお店で高額商品ばかりを売る、というスタイルもアリでしょう。
本の後半はいろんな小売店のパターンを上げて「これだからダメなんだ」という話が続きます。同じ話の繰り返しも多いので、現場の人でなければ読み飛ばしてもOKです。
『続・入りやすい店売れる店』
馬渕哲・南條恵著
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