DIALOG IN THE DARK

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』じゃないですよ。『ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇の中での会話)』。ドイツ語で言えばDIALOG IM DUNKELN。いや、そんなことはどうでもよくて。

9月12日まで、外苑前の梅窓院・祖師堂ホールで開催されているイベントです(インスタレーション、と、いうか)。完全に真っ暗な空間のなかに、野原や森や家やカフェがあって、その空間を真っ暗なまま、白い杖とガイドの声を頼りに8人一組で歩いていくという体験ができます。

ドイツで始まったこのイベント、たしか数年前から日本でも開催されていて、以前盲導犬育成の関連のお仕事[ocn.ne.jp]をしていたときに見つけて興味を持っていたんです。今回TBSラジオが主催ということでCMを耳にして、やっと参加することができました。

did_01.jpg

梅窓院・祖師堂ホールは外から見るとこんな感じで、竹に囲まれたモダンな建物です。

本人確認と受付を済ませると、腕時計や携帯電話など、音や光の出るものは一切ロッカーにしまって、順番を待ちます(1日20回×8人で160人参加できる計算)。

自分の順番が来ると、会場の手前の控え室で白杖(はくじょう)を手渡され、使い方を教えてもらえます。

そして会場へ。ガイドの人が中に待っていて、たまたまその回に居合わせた8人が、暗闇に足を踏み入れます。2〜3人のグループでいらっしゃった方もいました。

で、中にはいるとこんな感じ。

暗闇

いや、冗談ではなくて、実際こうなんですよ。夜寝るとき、目をつぶってもこんなに暗くないだろうってくらい、暗い。

一瞬平衡感覚もおかしくなった感じがする。とりあえずある程度広い空間なんだろうということは、わかる。

いつのまにか足元が草原になっている。「橋を渡ります」と言われる。どこにあるのか、どのくらいの幅なのかわからない。作り物の橋であること、踏み外したところでそんなに危険ではないだろうことは頭では理解できるけれど、実際の足元は不安で、歩幅はふだんの5分の1くらい、ほとんど摺り足のようになっている。

・・・この先を話してしまうとこれから行く人に悪いのでやめますが、とにかくいい経験であることは間違いないです。たぶん今後何度も、あの感覚を思い出すことになりそうです。

できれば昼間の回に行くのをオススメしますね。暗闇へのギャップが大きいですし、逆に会場から出たときまぶしくて目が痛くなるくらい、光を感じることができます。


で、本題。感覚とコミュニケーションって何なんだ、と。

もし、Dialog in the Darkのように、そもそも世界に光というものがなかったら(光というものを知覚することができなかったら)どうなるのか。

視覚が完全に奪われた状態で行動するとなると、その分聴覚と嗅覚、触覚が重要になりますよね(味覚は直接視覚の代わりにはならない)。さらに、その感覚で受け取った情報を元に、他社とコミュニケーションするとなると、通常は音声(言葉)で伝えるしかない。昆虫だったらフェロモンとかで交信できるんでしょうけれども。

で、その言葉ってのもあやしくて、目で見たことのないものを言葉で説明するのってものすごく難しいと思うんですがいかが? 「オレンジ」って言ったとき、みんな絶対頭の中にあの映像を思い浮かべてるでしょう? さあ、暗闇の中で私が「あ、これクマムシに似てる」って言ったとき、それ、伝わります? 「見た目」のない世界での、「美男」「美女」の基準ってどうなるんでしょうね?

大川興業[okw.co.jp]が『Show the BLACK』という公演をやっているんですよね(次回は10月)。これも真っ暗な中で行われる演劇なわけですが、客席で観客が気分が悪くなったりとか、誰か良からぬことをする輩がいたりするとまずいので、つねに暗視カメラ(ソニーのナイトショット[itmedia.co.jp]みたいなもんでしょうか)でスタッフが客席をモニターしているんだそうです。

これ、要するに、赤外線を知覚して処理する能力を持っていれば、「光のない世界」では超人的な情報収集能力を持てるということですよね。でも、その人が赤外線を使って何か表現しても、光としてはだれも知覚できないから、「なんとなく温かい」くらいの反応しか得られない。

比喩が伝わっているかどうか不安なんですが、「他人の見えないものが見えている人」が、同時に「それを他人にわかってもらえなくて苦しむ人」っていう構造は、程度の差はあれ人間みんなにある話なのではないのかなあ、と。

関連ページ


クリック募金でちょっといいこと。(クリック募金とは?)

【クリック募金】シルクロードに緑を(コスモ石油)

【クリック募金】ミャンマーの子どもにワクチンを(味の素)

【クリック募金】盲導犬の育成を支援しよう(価格.com)

こんなネタもどうぞ:


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です