『パパといっしょに』川崎 徹

パパといっしょに
すっごくシュールなのに(であるがゆえに?)心温まる絵本です。あの「ヤリガイ」のCMを作った川崎徹さんの作。たしか『広告批評』に連載されていたものを編集したもののはずです(全部で30篇)。手元にある1997年の初版の写真を貼ってみました。

描かれるのは画用紙にクレヨンで描いたような細い線(ぼく)と太い塗りつぶし(パパ)の親子の日常(ママは別居中らしい)。自由すぎるレイアウトのなかの単純な線が、川崎さんのユニークなコトバ感覚から生み出されるセリフと一緒になると、ただの線に表情があるような気がしてくる。


雪が降っていた。誰かがドアをノックした。
(ドアの絵)

2/12だった。
(雪の中に立つ12分の2)

「明日、約分します」

すでに新しい名刺まで
作っていた。
(「1/6」という名刺の絵)

(ちゃぶ台のまわりに座る僕とパパと2/12)

「おやめなさい」
(左右に首を振っているようなパパ)

パパは強く反対した。

「約分手術は危険だって
言うじゃないですか」

全員仮分数にもかかわらず、
実にほがらかな山田さん一家の
例を出して説得したが
決心をかえることは
できなかった。


・・・とまあ、伝わるかどうかわからないけど、こんな感じ。

単純にその絵と台詞のイリュージョンに笑うだけでも楽しめますけど、ふと考えて、1/6に約分しさえすれば新しい人生が開けると信じている2/12(どちらにせよ0.1666・・・であることには変わりないのに)の愚かさと、それを知りながらも2/12の決心を尊重して送り出すパパのやりとりというのはものすごく深みがあるとも言える。

時間をおいて何回か読んでみて欲しい1冊[amazon.co.jp]です。おすすめ。


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