鑑定の難関を突破して、没収の危機を脱した、祖母の形見の短刀。(前回から続いてます)
次はこのサビをどうにか落として、きれいな状態で保存したい。
刀の研ぎ師さんって、検索するとそこそこいらっしゃるんですね。東京だからかも知れませんけど、意外と近所にもいたりして。各研ぎ師さんのWebサイトなんかを見ると、値段はcm単価みたいな感じで、かつ、刀の状態によって見積が上下するらしい。どこがいいとか、高いとか安いとかの相場感がわからないけど、どうしたものか。
そんな中、和文教代表理事&甲州流 [kousyuryu.com]の埴原師範にご紹介いただいて、伺ったのはヘンドリッキ・リンデラウフさん。
この方です。動画の中での話はマニアックですけど、実際の動作と刀の状態の変化が見えるのでよかったら。
オランダ系ブラジル人のヘンドリッキさん、池袋の刀剣商・刀剣杉田さんで働いた後、いま研ぎ師をされているという。日本美術刀剣保存協会の現代刀職展の研磨部門で出品・受賞もされてます。
刀剣杉田さんのサイトには「外国人の見た戦国時代の日本」[token-net.com]という論文もあるのでこちらもよかったら。
そんなヘンドリッキさんの自宅兼仕事場に伺い、実物をお見せして、なんとかなりますかね、と相談すると、紹介のおかげもあってか、思いのほかリーズナブルな見積でお願いできることに。
刀&登録証をお預けしてから数週間。ふたたび仕事場にお邪魔しました。
ご家族とセンス良く、洋風に住みなしているアパートの一角がこの仕事場。急に和風。
面白いなと思ったのが、貼り合わせた砥石。最近は砥石の相場が上がって、なかなか望んだ大きさの石が入手できないので、こうやって他の石とくっつけて、作業できるように工夫しているんだとか。
天然の砥石も貴重品で、特定の山でしか取れない石があったり、流通してるものも中国大陸の方が投資目的で買い占めていたりする事情もあるそうで。砥石投資。数量限定のものがなんでも投資になっちゃう世の中。
こういう欠片みたいなのも、仕上げに向けた研ぎの段階の中でそれぞれに役割があるんですって。
自然物だったり、リサイクル素材で1日何時間も鉄を磨いて、刃物としての実用性能も出しつつ、しかも美しい。なんと素晴らしい技芸なんだろうと思いますね。
さて、そんなヘンドリッキさんの手によって研がれた祖母の短刀がこちら。
どう、日本刀っぽいでしょ。
やはり錆が深くて、微妙に凹凸が残っているらしいんですが、そこも均そうとすると刀身が全体的に減っちゃうんでそれはやめたとのこと。いやもうそれで充分ですよ。充分に美しい。
鑑定の時に破壊されかけた目釘の部分の装飾も、修復していただけて感謝感激。昭和初期ごろ(たぶんその頃はきれいだったはず)の輝きが戻りました。
とはいえ、この状態だとまだちょっと問題がありまして。